国家規格が国際規格と内容が一致していることを示す区分
IDTは国際規格をJIS(国家規格)化した場合に、元の標準とどれくらい近いものなのかを示す区分の一つ。IDT,MOD,NEQの3区分があります。「IDT」は、内容が「一致」していることを示します。
前提:国際規格であるISOの規格をJIS化する際には、まず国内にその規格の需要があるかどうかが審議されます。ISOの規格全てがJIS化されるわけではないという点に注意が必要です。
また、ISOの規格をJIS化する際には日本語への翻訳が必要となります。この際に、「読み手に分かりやすいように意訳する」あるいは「自国の事情に合わせて記載内容を追加・修正・削除する」と言ったことが行われる場合があります。単に技術仕様として参照する分には、構わないのですが、国際規格をベースとした認証活動では、そうした差異が問題になります。
そこで、自国の規格として再作成した際にどれだけの改変をしたのかを表記することが行われています。ISO/IEC Guide21-1:2005では、ISO加盟各国で生じるそうした差異のレベルを3段階で定義しています。
現時点で、ISO/IEC Guide21-1:2005はJIS化されていません(JSAサイトに対訳版はあります…50,963円也2026/08/28時点)。
JSAサイトで国際規格の規格を検索し、購入申し込み画面で「対応規格 同等性に関する説明」のリンクを選択してみてください。IDT,MOD,NEQの説明がポップアップで表示されます。
※この文章がISO/IEC Guide21-1:2005からの引用・翻訳なのかどうかは記載がありません。
IDT
identical(一致)
以下の場合、地域又は国家規格は国際規格と一致している。
a) 地域又は国家規格が、技術的内容、構成及び文言において一致している。又は、
b) 地域又は国家規格が、ISO/IEC Guide 21-1:2005の4.2節に規定した最小限の編集上の変更はあるが、技術的内容において一致している。「逆も同様の原理」があてはまる。
MOD
modified(修正)
許容される技術的差異がはっきりと明示され、かつ、説明されている場合、地域又は国家規格は国際規格から修正されている。この場合、地域又は国家規格は国際規格の構成を反映し、その構成の変更は両規格の内容が容易に比較できる限り許容される。修正規格は一致対応の場合に許容される変更も含む。「逆も同様の原理」があてはまらない。
NEQ
not equivalent(同等でない)
地域又は国家規格は技術的内容及び構成において国際規格と同等でない。そして、それらのどの変更も明確には識別されていない。地域又は国家規格と国際規格との間に明確な対応が見られない。
注 この対応の範ちゅうは国際規格の採用に該当しない。
JSA WEBDESKの「同等性に関する説明」より
https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=ISO%2FIEC+Guide+21-1%3A2005
•JIS Q 27001の各バージョンは、IDTとなっており、国際相互承認においてISO/IEC27001と同等のものとみなされます。
ちなみに、国際規格をJIS化したものについて、JISCのサイトでは
2024年の時点で IDT:MOD:NEQ=38:60:2 としています。
Harmonization of JIS with international standardsの記載より
https://www.jisc.go.jp/eng/jis-act/index.html
MOD
•前項でIDTについてご紹介しました。では、MOD規格にはどんなものがあるのでしょうか?
| JIS | JIS名 | 基ISO | MODの理由 |
| JIS R 3206:2023 | 強化ガラス | ISO 11485-1:2011,ISO 11485-2:2011,ISO 11485-3:2014,ISO 12540:2017 | 我が国の市場の実態に整合させるため |
| JIS A 1475:2019 | 建築材料の平衡含水率測定方法 | ISO 12571:2013 | 我が国で実施されている測定方法の実情を反映させるため |
| JIS B 1101:2017 | すりわり付き小ねじ | ISO 1207:2011,ISO 1580:2011,ISO 2009:2011,ISO 2010:2011 | 対応国際規格には規定されていない規定項目を日本産業規格として追加している(中略)我が国における生産・使用の実態を反映 |
| JIS Q 27000:2019 | 情報セキュリティ-用語 | ISO/IEC 27000:2018 | [次項で] |
ISO規格を国内事情に合わせるために、MODとすることがある。
そのMODの中にISMSの用語定義のJIS Q 27000がある!
JIS Q 27000がMODである件
•JIS Q 27001:2023から参照されているJIS Q 27000:2019は、実はMOD規格でした。
•変更された定義を参照しているのに、27001のIDTに影響しないのでしょうか?
•序文にMODとなった差分が書かれていました。
0序文
この規格は,2018年に第5版として発行されたISO/IEC 27000を基とし,箇条3の用語及び定義については技術的内容及び構成を変更することなく作成し,情報セキュリティマネジメントシステム(以下,ISMSという)の概要などを示した箇条4以降を削除して編集した日本産業規格である。
JIS Q 27000:2019より
なぜ削除されたかは、書いてありませんが、下記のように、削除された、箇条4「ISMSの概要」、箇条5「ISMSファミリ規格の概要」は、解説的なもののようです。
一方、 27000を参照している27001の側では、以下のようになっています。
3.用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS Q 27000による。
JIS Q 27001:2023より
JIS Q 27001:2023は、JIS Q 27000の「用語及び定義」だけしか参照していません。ですので、JIS Q 27001を読み解くうえで、箇条4・5の削除は影響ないのです。これはISO/IEC 27001でも同様です。
3. Terms and definitions
For the purposes of this document, the terms and definitions given in ISO/IEC 27000 apply.
ISO/IEC 27001:2022より
27000がMODである件のまとめ
•JIS Q 27001:2023はIDTなので、国際相互承認によってJIS Q 27001:2023を基準として認証されれば、国際的に認証が認められる。
•一方、実はJIS Q 27000:2019がMODだった

用語に英文と違いがあるのでは?
→箇条3の用語及び定義については技術的内容及び構成を変更することなく作成
→用語の変更はない

•ではなぜMOD?

•JIS Q 27000では、箇条4、箇条5にあった解説的な部分が削除された。
•では、箇条4,5をISO版で見なければならないのか?

•元々27001からの参照は箇条3だけだったので、見る必要はない。
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