•最小権限の原則の用語解説では1975年のジェローム・サルツァーとマイケル・シュローダーとの共著を紹介しました。そこでは、以下のように記載しました。
「システムにおける全てのプログラムと全てのユーザーは、そのジョブを完遂するのに必要な最小の権限セットを使って動作すべきである。」

実は、サルツァーが最初に「最小権限の原則」に言及した時は、この表現ではなかったんです。

サルツァーによる最小権限の原則についての言説で最も古いものとみられる1973年2月のメモでは、最小権限の原則は以下のようになっていました。

「あらゆるプログラムに対し、そのタスクを遂行するために必要な最小限の権限のみを付与すべきである」

MIT公開のProject MACのInformal memoranda #35から引用

https://web.mit.edu/Saltzer/www/publications/rfc/csr-rfc-035.pdf

その後、1973年10月の学会で発表した論文が残っています。それらを比較したのが下の表です。

文書記載内容
対象権限の表現述語
1973/02Request for Comments No. 35すべてのプログラムthe least privilege与えられるべき(granted)
1973/10PROTECTION AND CONTROL OF INFORMATION SHARING IN MULTICSすべてのプログラムと特権利用者the least amount of privilege用いて動作すべき(operate using)
1975/09The Protection of Information in Computer Systemsすべてのプログラムとすべての利用者the least set of privileges用いて動作すべき(operate using)

この表のように、数年の時を経て磨き上げられてきたもののようです。

•当初は「プログラム」だけを対象にしていたが、「特権利用者」も対象に加え、さらに汎用的にするためなのでしょうか、「特権利用者」を「すべての利用者」と変えています。
•また、権限についても単独の権限ではなく、権限の集合、権限のセットと変化させている。
•さらに権限は「与えられるもの」から、「使うもの」に変化している。

•結果として1975年の論文の表現が世の中に広く受け入れられているようです。

改めて「最小権限の原則(the least privilege)」という言葉そのものの起源はというと…
サルツァーの発明ではないようです。

前出のサルツァーが1973年に書いたメモには

国家安全保障局(NSA)の職員であり、かつてProject MACのメンバーでもあったDavid J. Edwards氏が示唆した設計原則、「最小権限の原則(principle of least privilege)」について簡潔に論じます。
Request for Comments No. 35

という記述があります。…では一体誰が最初にいいだしたのでしょうか?

…原典探しの旅は果てしない…まずはここまでで一区切りとさせていただきます。

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