Tp08_情報の保管期間

•資産台帳を作成すると「資産の保管期間」を記載することになりますが、これがなかなか悩ましいものです。

•期限なのか期間なのか、期限(期間)が決まるのはいつなのか、期限が来た時、廃棄するのは義務なのか、それを決めることができるのは誰なのか。

•こうした状況をきちんと整理している組織はなかなか見かけられません。

•用語も「保持」「保管」「保存」など似ている言葉がいくつかあり、使い分けられていますが、規格のバージョンによって割り当てが変わったりしています。

•ISOのマネジメントシステムでの文書管理の要求以外にも世の中には様々な文書管理の考え方、用語の使い分けがあります。

•世にあるすべてのパターンを整理することは無理かもしれませんが、一般的なISMS構築組織での保管期間のパターンの整理を試みてみます。

「保持(retention)」と「保管(storage) 」と「保存(preservation) 」

•まずは、「保持(retention)」と「保管(storage) 」と「保存(preservation) 」について考えてみましょう。

•ISMSの規格では定義されていませんが、用語として使用されています。つまり日常語として使用しています。保持11か所、保管1か所、保存7か所です。

•例1:7.5.3d) 読みやすさが保たれることを含む,保管及び保存
•例2:7.5.3f) 保持及び廃棄

•「廃棄」と対比されている「保持」は「保管」と「保存」双方を含む概念と読み取れます。では、「保管」と「保存」の違いは?というとここからは読み取れません。が、多くの組織で「保存」と「保管」を区別して扱っています。

•細かい違いはあるようですが、概ね以下のように扱っているようです。

呼称保持の仕方保持コスト実施例
保管随時参照・更新しながら保持紙文書:常用の書棚・ロッカーへの格納 電子文書:担当者PC内、ファイルサーバーなどにすぐに使えるファイル形式で格納
保存将来的参照に備えて保持紙文書:倉庫などへの格納 電子文書:圧縮してアーカイブ、オフライン媒体への格納

近年電子文書の割合が増加し、電子的格納領域が低価格化していることから、「保管」と「保存」の区別の必要性は薄らいでいるようです。とはいえ、不要な情報が大量にあると、情報検索時に多くの時間がかかるなどの弊害もあります。業務効率・コストを考えて適切な格納手段を選びましょう。

期間と期限

•通常情報を保持する義務は起算点と期間で表されます。「XXになったら、X年間保持」という規則です。期限は「起算点」と「保持期間」が確定しないと決まりません。

例1:「労働者名簿は、労働者の退職等の日から3年間(注)保持する」
この場合、労働者名簿を作成した時点では退職日が分からないため、保持期限を決めることができません。退職等によって起算日が確定した時点で、初めて保持期限が決まります。

注:労働基準法第109条では5年。第143条により当分の間3年。

•例2:「XX部年間事業計画書は年度終了後7年間保持」
となっていた場合は、個々の計画書は対象年度の7年後が保持期限であることが最初から分かっています。

いずれにしろ、きちんと管理するには、「起算日」と「保持期間」が必要になります。資産管理表に入っていますか?

•保管から保存への移行

•多くの組織が、情報の活用期間が終了した後、保管から保存に移行します。「保管状態を維持するためのコストはかけられないが、万一見返す必要が出来たら困る」という情報を低コストの保持方法に移行するわけです。

•これを考えると、情報資産の管理には「起算日(の決定条件)」「保管期間」「保存期間」の定めが必要になります。

•改めて保管期間/保存期間/保持期間

•JIS Q 27001:2006では「保管期間」となっていたので、「保管期間」としている組織が多いようです。この記事のタイトルも「保管期間」にしてあります。

•「保管」期間が終わり、「保存」に移ってから「廃棄」と考えると「保存期間」が妥当なように思えますが、「保存」を経ないで「廃棄」する情報もありますから…。「保管」「保存」のどちらも含めて考えることができるので『保持期間』が最も分かりやすいのではないかと思います。
※まあ、審査でこの呼び名について指摘を受けたという話は聞いたことはありませんが…。

保持期間(保管期間)後の対応

•保持期間の意味は情報資産の性質によって異なります。

•保持する理由:法的義務、契約上の義務、事業上の都合
•保持期間後:廃棄してもよい/廃棄しなければならない
 ※保持する理由は保持期間後の取り扱いにも関連しています。

•「廃棄してもよい」場合の判断

保持する「メリット」と「リスク」「コスト」の比較

•持っていることによる事業上の「メリット」
 •事業活動にどれだけ貢献し得るか
•持っていることによる「リスク」
 •情報漏洩時のダメージなど
•持っていることによるコスト
 •ストレージのスペース
 •検索時の負荷など

「破棄してもよい」場合は、保持し続けるメリット(≒利用価値)より、リスクあるいはコストが大きい場合は速やかに破棄することが望ましい。

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