•「情報(information)」という言葉はさまざまな分野、場面で使われますが、それぞれの分野で違った扱いがされていて、決定版とできるような定義はないようです。
•ISO/IEC 27001の用語定義を受け持つISO/IEC 27000:2018にはその定義がありません。
•他の分野での「情報」の考え方を下の表にまとめました(幅広く調査するために、ClaudeとChatGPTに調べてもらいました)。
•「意味のあるデータ」と言われたり「不確実性を数量化」と意味から切り離されたりします。また、「正しい情報(真である情報)だけが情報である」としたり「真も偽も情報である」としたり場面によって、人によって取り扱いは大きく異なります。
•ISMSについて、解説するこの場では、「組織が取り扱う情報」に注目して「組織が管理すべきデータ」と考えます。
| 定義・言及の要約 | 分野 | 出典 |
| 意味のあるデータ | マネジメントシステム規格(品質) | JIS Q 9000:2015,3.8.2 |
| 事実、事象、事物、過程、着想などについて知り得たことで、一定の文脈中で特定の意味をもつもの | IT用語規格 | JIS X 0001:1994,01.01.01 |
| 選択に伴う不確実性を数量化したもの。意味内容は扱わない | 通信工学 | C・E・シャノン, W・ウィーバー『通信の数学的理論』The Mathematical Theory of Communication, 1949/植松友彦訳, ちくま学芸文庫, 2009 |
| 情報は情報であり、物質でもエネルギーでもない | サイバネティクス | N・ウィーナー『サイバネティックス——動物と機械における制御と通信』 Cybernetics, 第2版1961/池原止戈夫ほか訳, 岩波文庫, 2011 |
| 情報の基本単位は「差異を生む差異」 | 人類学・認識論・サイバネティクス | G・ベイトソン『精神の生態学へ』 Steps to an Ecology of Mind, 1972/佐藤良明訳, 岩波文庫, 2023, 下巻「形式、実体、差異」 |
| 一般的定義では、適切に構成され、意味を持つデータ。フロリディは、真であることも必要だとする | 情報哲学 | L・フロリディ『情報の哲学のために——データから情報倫理まで』Information: A Very Short Introduction, 2010/塩崎亮・河島茂生訳, 勁草書房, 2021 |
| <「information」単独の用語項目はない> | 情報セキュリティ規格 | ISO/IEC 27000:2018 |
情報の姿についての考察
•電子情報・紙情報ではないものは?
•温度、湿度、音などは、測定した後の「測定値」は情報だが、温度、湿度、音そのものは「情報」なのか?
•攻撃者観点での情報取得の考察
•製造工程を秘匿しようとしている工場があったとします。その工場の周辺で、音や温度、排気される煙などを収集することで製造工程を推測できる場合があります。
•杜氏(日本酒を作る技術者)が肌感覚で温度管理している酒蔵があったとします。温度の数値情報はないので漏洩しにくいのですが、酒蔵への侵入を許してしまえば、温度の測定は可能です。
•新製品の外観を秘匿しようとする、ある自動車部品メーカーは構内に立ち入る訪問者のスマホのカメラにシールを貼ることを義務付けています(筆者の経験)。
•第二次世界大戦時、連合国側は鹵獲したドイツ軍戦車の製造番号などから、月産台数をかなり正確に推測していた。
•外部者視点で情報を得ることができるもの(情報源)も情報セキュリティの観点で管理が必要な場合があります。その中には一般的に「情報」として扱われていないものもあることに注意が必要です。以下に「外部者視点の情報源」の事例を挙げます。
| 類型 | 問題の構造 | 該当事例 |
| ①サイドチャネル | 意図しない物理的放出(騒音、ガス、電磁波、熱など)から内部の情報が推定できる | 電磁波解析による情報取得(TEMPEST関連)、電力解析、打鍵音・稼働音からの工程解析、残留熱など |
| ②直接観測 | 秘密そのものが物理量として存在し、無断で測定される | 酒蔵の温度、会話の盗聴、覗き見 |
| ③転用・集約 | 組織の通常の活動で生み出された情報が、何らかの手段で外部から観測可能となったものを外部者が別の観点で集計して利用する | 製造番号(ドイツ戦車問題)、部品調達仕様からの(兵器)性能の推定、ヒートマップ事例、ペンタゴン・ピザ指数、OSINT |
・ヒートマップ事例:ランニング位置情報サービスの世界マップで米軍の秘密基地の
内部の動線・巡回パターン・利用者の行動が推測可能になってしまった事例。
・ペンタゴン・ピザ指数:米国の戦略上重要な事件の直前にピザの注文数が増加する
というピザ店関係者の経験則。
・OSINT:Open Source Intelligence。公開された情報の分析で秘匿されている情報を推測する活動。OSINTは公開情報限定である点で他の③の事例と異なる。
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